久保さん(水戸市)
システム系の会社を定年退職した久保さん。その経験をいかして子どものためのロボット教室ができないかと考えていた。以前は都内で暮らしており、教室の立ち上げのため市場調査まで行なったが、コロナが蔓延し断念。茨城に戻ってきたところ市報で「ちいすけ(地域の助っ人の略称)」の募集を目にした。
当初は、介護現場で働くことは考えていなかったが、身内の介護も経験しており、何かできればと思い参加したという。
最初は高齢者向けのスマホ講座などを希望していたが、ドライバーの募集があると話を持ちかけられ、介護老人保健施設はなみずきに、ちいすけとして入職した。
働き始めて毎日が充実しているという。福祉施設の種類や介助技術など、若い人に教えてもらいながら、一緒に働ける環境が楽しいそうだ。
(ドライバーとして働く久保さん)
以前より地域の方からスマホ講座の開催を求める声が上がっていた。そこで久保さんに声がかかった。2022年11月より ありが分校にて月1回スマホ講座を開催している。
スマホ講座は「あなたのスマホで教えましょう」というスタンスをとっている。貸し出しのスマホでは自分のものと操作が異なるため、覚えられず困っているという声に応えたためだ。参加者の声に寄り添ったこのイベントにはリピーターが多い。
最初はカリキュラムを作って教えていたが、それぞれのスマホの操作に違いがあり、カリキュラム通りにはいかなかった。さらに、こちらが教えたいと思っている機能は、そこまで必要とされていないことに気づいたそうだ。必要とされているのは、もっと身近な機能だった。
そこからは参加者が教えてもらいたいものを、みんなで一緒に話しをしながら操作することにしている。
(できる人ができることを、互いに教え合うスマホ講座)
講座は、事務局の小林さんが「何か悩んでいることはありますか?」と参加者に聞くところから始まる。参加者からは臆することなく手が挙がる。講座時間は1時間程度だが、悩みを聞き取るだけで30分が経過する。
「それ聞くの3回目だよ、ということもあるけれど、それが躊躇なく言える環境って、とってもいいじゃないですか。講座後には1対1でスマホを操作したり、ダラダラおしゃべりしたり…。その時間もいいんですよね。みなさん(の目的は)スマホ講座半分、お茶会が半分じゃないかなぁ?」と久保さんは笑う。
意欲的に活動を行う久保さんに、今後の展望について質問をしてみた。
今後は移動に困っている人のサポートもしていきたいと話す。はなみずきに勤めながら、ご利用者のお悩みを聞いた。家族や友人と外食をすることを楽しみにしているが足がなくて出掛けられずに困っているという方など移動に関する悩みは多い。家族がいても、車いすの移乗・移動の知識を知っている人は少ない。そんな方々のサポートができればと思っているという。
ふと、こんなに意欲的に活動を続けられる秘訣はなんだろうと考えた。
久保さんは「仕事から健康をもらっている感じかな。」と話してくれた。インタビューは終始笑顔で、何度も「楽しい」と口にされる。
新しいことへのチャレンジや人との関わり、ご自身の生活を楽しむ気持ちこそが、健康に繋がるのかもしれないと感じた。
ききて・写真/細川夏津稀、川又久美子、小林信彦