ちいきの学校

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2024.5.16

第16回しろうと先生 林さんインタビュー

高齢者の技術はすごい、活躍の場を拡めていきたい

林さん(水戸市)

剪定枝を使用した、梅染めを発信

今年2月、こみっとフェスティバル2024(注釈1)がイオンモール水戸内原にて開催された。林さんは水戸ユネスコ協会の一員としてこのイベントに参加している。ユネスコ協会はSDGsの活動として「梅染めした生地を用いたつまみ細工のワークショップ」を行い、多くの人がブースに集まり大盛況となった。 

林さんが梅染めを始めたのは、4年程前。日本三名園の一つに数えられている、偕楽園で、梅の剪定枝が大量に破棄されていることを知った。偕楽園には約3000本の梅の木が植えられている。きれいな梅の花を咲かせるためには、枝の選定が必要で、毎年大量に枝を破棄することとなる。この捨ててしまう枝を生かして新しいものを生み出そうと梅染めを思いついたそうだ。

梅の枝を煮出して生地を染める、梅染め。梅の種類や染める温度・時間によって濃淡が決まるため、一つとして同じものにならない。また時間が経つにつれて褪色していくが、色の経過が楽しめるところも梅染めの魅力だ。

 

注釈1:「こみっとフェスティバル」は、市内のNPO法人やボランティア団体等の市民活動団体が、福祉や環境、国際交流、まちづくりなど、様々な分野で活発に活動している中で、各団体間のネットワークづくりや、一般の方々に、市内のNPO法人やボランティア団体の存在を知っていただき、身近に感じてもらうために、2013年から開催しているイベント
注釈2:機関•団体と密接な連携をとりながら、 地域に根差した教育文化活動・国際交流活動を実践•推進する民間 のNPO団体

梅染めの生地を使用した巾着袋

(梅染め生地をつかった巾着袋)

 

伝統技術をつなげ、拡げていく

梅染めを続けるようになり、梅染めに関する講演や、高校生大学生に直接技術を伝える活動を通して、伝統的な草木染の技術を継承する機会が増えてきた。今では、水戸工業高校、智学館中等教育学校、常磐大学などでは梅染めの技術を活用し、各校独自の活動へと拡がっている。

「僕たちはきっかけとしてやり方を教えたんです。そこから学生たちはどんどん発展させている。すごいですよ。」と林さんは語る。

常磐大学 小関ゼミの活動のようす

常磐大学 小関ゼミの学生たちはフィリピンに研修に行き、現地の人々に梅染めを紹介している。

水戸工業高校の活動のようす

水戸商業高校の生徒たちは、工業科の協力のもと、梅染めした絹糸で組みひもアクセサリーがつくれるようになった。

智学館中等教育学校の活動のようす

智学館中等教育学校の生徒たちは、西ノ内和紙を梅染めし、竹を割ってうちわが作れるようになった。

(みと・まち・情報館にて展示された学生の取り組みのようす)

 

個人の活動が生きてくる

林さんは高校の美術教師だった経験から趣味が高じ、12、3年前より木工のおもちゃやブローチなどを作り始めた。「作ったもので誰かが笑顔になってくれることがやりがい」という林さんは笠間に木工工房を構えており、地域の祭りやイベントにも参加する。笠間道の駅では「図工の日」という木工教室を月1回開催しており、子どもたち人気だ。

木工は趣味にとどまらず、作品の販売も行っている。販売するという責任から技術が磨かれ、作品の質にも繋がり、そこで得た技術がまた、ボランティア活動に還元されるという。

木のロボット

木の手回しオルゴール

つなぐ役割を担いたい

精力的にそして多方面に活動を続ける林さんに、今後の展望について伺った。
「人ですよね。」と一言。
林さんは、高齢者のもつ技術を伝え、拡めたいと語る。
「活動の中で、職人技術をもつ人たちをたくさん知っている。活動のようすや技術を、もっと若い人たちへ伝えたい。受け継ぐ者がいないとその技術は無くなってしまう。つなぐ役割をしていきたいですね。」
林さんの活動は、全てこの想いに繋がっているように感じた。

林さんインタビューのようす

技術の伝承と活動の継続を支える、大切な役割を担っている人物だ。
自分の「当たり前」も世代が変われば「価値」になるをテーマにしているこの『しろうと先生』の活動も、技術を持った高齢者と地域をつなげるようなものにしていきたいと改めて感じた。

 

 

ききて・写真/細川夏津稀、小林信彦